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私、ニビルは無事だった あれだけ悲劇風味の展開を重ねておいてそれかい!とか突っ込まないで欲しい 認めたくない事だが、結局機械の体である以上、破損した箇所は取り替えてしまえば良いのもまた事実だった 特に、私のオーバーロードは、「オーバーロードの使用」それ自体には何のペナルティも無い 単に、ストラーフの主力武装の殆ど、武装神姫の素体直付けパーツの使用に制限があるだけである 無論、もしかしたら他にも何か見えないペナルティがあるのかも知れないが 顕現しないものの事まで考えていても仕方が無いというのが私の結論だった ズタズタになった神経系を修復し、新しい四肢に慣れるのに数日を要したが、あとはいつも通り。決勝リーグに向けての調整を重ねるのだった 「Somewhere Nowhere」 「・・・じゃぁ、姉さまが今迄強化パーツを使わなかったのは?」 「そうだよ、ニビルの体に宿ったオーバーロードが拡張端子の使用を困難にしてるのさ」 逆さまにひっくり返った状態で、ヌルはキャロの話を聞いていた 場所は槙縞玩具店の地下にあつらえられたリアルバトル用演習場である・・・本来はここも、槙縞ランキングの主要舞台の一つとして使用される予定だったらしいが、何故か皆川はバーチャルバトルに拘りを持っていた 愛玩派オーナーの参入も促しやすい事と、別にバーチャルバトルだからといって不平不満を述べる神姫も特に居なかったので、この演習場は放置され、時折ヌルやクイントス等が練習に使っているだけの施設に成り下がっていた 本来なら電動薬動の様々なギミックが盛り込まれていたのだが、天井の照明すら入っておらず、手入れも全くされていない様子であり、その種のギミックも全くの稼動不能状態である 「何で今迄言ってくれなかったんだろう・・・」 体を起こし、明確に不満を顔中に表すヌル 「あんたに話す必要がないと考えた理由ってんなら判らないでもないがね」 ヌルの肩にタオルをかけつつ、呟くキャロ 「拡張装備を使わずに・・・つまり普通に考えたら圧倒的に不利な状態で勝つ。そういう格好良い所をあんたに見せたかったんだよ。多分ね」 「いっつもそうだ・・・姉さまは・・・私は別に、姉さまの欠点だって含めて姉さまの事を愛せる自信があるのに・・・」 タオルで顔まで隠して蹲る 「惚気は良いけどさ・・・あんただってあるだろ?そういうの」 「どだいからして、準決勝でニビルと互角以上に戦う為に秘密特訓ってのも充分過ぎる程格好付けだと思うけどね、あたしゃ」 「・・・・・・」 確かに、並み居る強豪を押しのけて、準決勝でニビルとヌルが当たるというのは、両者の実力から考えて相当無理がある事を、ヌルはやはり知覚していた ニビルはまだオーバーロードがあるから良いが、ヌルは実戦経験という観点に於いて華墨とほぼ同等の新人であり、コネによる恵まれたトレーニング環境と、華墨のものほどまだ明白ではないが、ゆらぎ由来の密着格闘戦における天性のカンの良さで、幸運の女神に拾われたに過ぎない いざ戦闘になったら、どう考えても『ズィータ』や『ウインダム』には勝てないし、『ストリクス』『タスラム』相手では戦闘と呼べるものになるかすら怪しく、『仁竜』には得意距離における戦闘経験値に差がありすぎた (結局私は・・・あいつに勝つので精一杯なのか・・・) 『ジルベノウ』に勝った事実を、実感として明確に受け入れる事が彼女には出来ていなかった と、いうよりも、あの瞬間のヌルの戦力というのは実は相当な強運に恵まれた上での物に過ぎない事に、彼女自身が何よりも気付いていた (姉さまへの愛で私の心が満たされていたって、空を飛んでいる相手は降りてきてくれないし、長距離砲撃が出来る相手は近づいてはくれないよなぁ) 結局それまでの戦闘プランそのものが脆弱過ぎるのだ・・・だからここ数日、ヌルは新しいスタイルの模索を始めていた 憧れた銃撃戦のみでの戦闘スタイルを諦め、重装甲と白兵戦闘能力をより重視したスタイルへの転換・・・ 徐々に自分が嫌っている「あいつ」・・・つまりは華墨のスタイルに近付いていくのが厭だった 「体のほうは、もう良いのか?」 トレーニングを再開したニビルに話しかけるクイントス 「ええ、大丈夫よ・・・それにしても流石は、『私に挑む為にこの一連の闘いを経て君達がさらに強くなってくれるなら』なんて真顔で言うだけの事はあって余裕ね。別に貴女に心配される謂れは無いわ」 「・・・自分を偽っても仕方あるまい。どんなに繕おうと、自分は自分以外の誰かになどなれはしないのだからな・・・」 「・・・・・・っ!説教がましく言わないで・・・遅れを取り戻すのにこっちは必死なのよ」 「・・・済まない、邪魔をしたな・・・」 クイントスにとっては自分自身を含めて、あらゆる武装神姫の価値基準はただひとつ、「どれくらい強いか」なのであろう 自分自身もそう思われ、そういう風に値踏みされているであろう そういう考えは半ば被害妄想的ですらあったが、「どれだけ頑張っても武装神姫は武装神姫」という強固なクイントスの信念が、彼女の立ち振る舞いに現れ、貫かれるべき根幹を成しているのもまた事実であった そして、その点がまさしくクイントスを嫌う最大の理由なのではないかと、最近ニビルは気付き始めていた 彼女の誇る「完璧さ」は自分の目指そうとしている世界の扉を閉じてしまう・・・そういう厭な予感 彼女のあり方が武装神姫のあるべき姿なのではないかと思ってしまう強迫観念 本人にとっては全く謂れ無き嫌悪であったが、クイントスはニビルにとって、打ち破るべき磐石な、頭の固い常識の象徴であった 『自分の目指すものを否定する存在を嫌悪する』 そう書けば普通かも知れないが、だからといってクイントスの一言一句に食って掛かり、同じ部屋に居る事すら避けようとするニビルの態度はヌルならずとも相当鼻に付いただろう 「・・・やはり、相当嫌われてるのだな・・・」 自分の強さを妬まれ、憎悪される分には却って戦士を自称するクイントスにとって賞賛であったかも知れない だが、ニビルがそういう人格でない事を彼女は知っていた・・・だからこそ余計に、嫌われる理由に思い当たらないあたり、このふたりの関係はやはり良好と言えないものだろう 「やっぱり問題になるのは空中戦だって!装備をもちっと充実させて備えるべきだろ」 「何いってんのよ!むしろ今更慣れない戦術の練習をするよりは長所を伸ばすべきに決まってんじゃない!ばっかじゃないの!?」 「・・・仲良いというか・・・なんだかとても分かり合っているのだな、エルギール、マスター・・・」 「お前の為だろうが!!」(←同時→)「べ・・・っ別にアンタの為じゃないんだからね!!」 「・・・・・・」 エルギールが来た事によって、華墨は決勝リーグ開催迄の間練習相手に困る事は無かった ここで初めて、華墨はエルギールの『まだ誰にも見せていない』公式武装形態を見た訳だが、何故彼女が其処までしてくれたのかについて思いを馳せる事はついぞ無かったあたり、エルギールもかなり報われない神姫である 因みに、琥珀は普通の料理に関してはチョコレート程危険な腕前では無かった事が武士にとって幸運であった事もここに併記しておく 「何にせよ、僕らがここまでしてあげたんだ、そこそこ善戦してくれないと怒るよ」 「わ・・・判りました琥珀嬢!この華墨、この・・・」 丁度太刀を持っていなかったので、手近にあったフィギュアの剣を胸前に構える 「このまどろみの剣(注1)にかけて!無様な闘いはいたしません!!」 「うむ、頑張って来るが良い」 「勝手に俺のフィギュアの剣をかけてんじゃねえ」 決勝リーグは、もうすぐ始まろうとしていた 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ 注1 2030年発売の、「ドラゴンクエストⅩⅤアクションフィギュア」No.12「遊び人ポルメ」の付属品
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B.S.L(Busou Shinki Laboratory=武装神姫研究所) スバルの父親、長月元が勤めている神姫を「研究・開発」する施設。 ここでは、新たな神姫を開発し、それを各企業に提供する。 また、既存の神姫たちのデータを研究し、俊敏性の強化や耐久力の強化などを行っている。 CSCも貴重なこのご時世に、新たな低コスト・高性能CSC「CSP(コア・セットアップ・パッチ)」も開発中。 狼型MMS KTX01W1 狼襲(ロウシュウ) 予想CV:水橋かおり B.S.Lが、Kemotech社の新商品として開発・提供した神姫。 狼をモチーフにしており、他のKemotech製神姫よりもスピードが速い。 ただし、スピードを活かすために防御力が極端に削られている。 また、コストもかかることから試作機が三体までしか作られず、商品化は見送られた。 性格上はとても明るく、自分が商品化されない境遇でも「大丈夫だから」と笑っていられる。 三体は以下の通り。 狼襲(壱型) 一番初めに作られた試作機。 スピードの調節が設定されておらず、走る内にオーバーヒートを起こし炎上した。 狼襲(弐型) 壱型の後継機。 スピードの調節を行い、冷却性能を向上。 壱型よりは幾分マシだったが、AIの処理能力の低下で、廃棄処分される。 狼襲(参型) 狼襲の最終型。 スピード・冷却性能・AIの処理能力、どれをとっても神姫としての基本性能を凌駕している。 しかし、コストと製作時間が掛かるため、量産化(商品化)されなかった。 狼襲(参型)は、元が手掛けており、「この子を大事にしてやって欲しい」との理由で、 スバルに渡された。 武装 襲牙・雷砲(しゅうが・らいほう) 中~遠距離[ランチャー] 襲牙 近~中距離[ナックル] 襲牙・雷鉄(しゅうが・らいてつ) 近距離[特殊] 甲冑・狼牙(かっちゅう・ろうが) アーマー 翔燕・速脚(しょうえん・そくきゃく) 脚部 戦乙女型MMS TSFX01 ヘルムヒルデ 予想CV かわしま りの B.S.Lが、初期(2年前)に開発した神姫。 当初予定されていた新型CSC『ダークネス※1』と共に提案され、 実戦試験を行うが、先に騎士型サイフォスがロールアウトしてしまったため、 プロジェクトは破棄され、ヘルムヒルデ自体も機能停止された。 しかし、時を経てこのプロジェクト(CSCは除く)が復活し、一体のみだが試験体が再び構築されることとなった。 名前の由来は、北欧神話の「ヘルムヴィーケ」・「ブリュンヒルデ」から「ヘルム」と「ヒルデ」をもじった。 武装 魔槌・ミョルニル 近距離[両手・打撃] 魔銃・ラグナレク 中~遠距離[片手・両銃] スキル:神々の黄昏 魔楯・ヴァルハラ シールド[防御] ニーベルンゲンの指環 アクセサリー[特殊] スキル:オーディンの加護 タロットカード 中~遠距離[特殊] ルーンの刻まれたカードが展開され、出たルーンに応じて攻撃が下る。 フレイア 頭部 エインフェリア アーマー(1) ヨルムンガンド アーマー(2) フェンリル 脚部 ※1 CSCダークネス KARASUことレイヴン…『望まれぬもの達』の共通CSC。 効果は、 1.AIの無駄な動作の禁止 2.絶対服従(逆らうことは出来ない) 3.意思に関係なく、神姫を文字通り破壊するまで攻撃し続ける 1はプラン上あったものだが、2と3はKARASUのオーナーが勝手にプログラミングをしたもの。 別の名を「亡者の叫び声」。
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『ねここの飼い方』 あらすじ 風見美砂はある日、ふらりと入ったセンターで武装神姫と出会う 帰りに彼女が手にしていたのは1つの箱…… それは偶然、それとも必然? 二人の物語が、今…始まる 著 ねここのマスター 近状・更新状況 1/23 書籍&イベント情報更新。 DLはじめました。 1/1 書籍&イベント情報更新。 あけましておめでとうございます。今年こそ頑張る! 『ねここの飼い方』あらすじ Web拍手 ねここシリーズ人物設定 なぜなに武装神姫 ねここの飼い方、時系列 メインストーリー≪ねここの飼い方≫ R-18有 ≪ねここの飼い方・劇場版≫ ≪ねここの飼い方・光と影≫ R-18有 ≪ねここの飼い方・その絆≫ ≪ネメシスの憂鬱≫ ≪ねここの飼い方・温泉でGO!≫ 外伝 書籍&イベント展開 *New* Web拍手 設置してみました。お気軽にどうぞ~ ねここシリーズ人物設定 なぜなに武装神姫 みさにゃんとねここが、毎回色々と解説してくミニコーナー ねここの飼い方、時系列 メインストーリー ≪ねここの飼い方≫ R-18有 ●以下長編(完結作品) ≪ねここの飼い方・劇場版≫ ≪ねここの飼い方・光と影≫ R-18有 ≪ねここの飼い方・その絆≫ ≪ネメシスの憂鬱≫ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅠ~ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅡ~ R-18 ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅢ~ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅣ~ R-18 ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅤ~ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅥ~ R-18 ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅦ~ R-18 ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅧ~ R-18 ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅨ~ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩ~ R-18 ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅠ~ R-18 ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅡ~ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅢ~ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅣ~ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅤ(改訂版)~ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅥ~ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅦ~ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅧ~ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅨ~ R-18 ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅩ~ ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅩⅠ~ R-18 ねここの飼い方 ~ネメシスの憂鬱・ファイルⅩⅩⅡ~ R-18 *完結* ≪ねここの飼い方・温泉でGO!≫ ねここの飼い方・温泉でGO! そのいち Coming Soon…… 外伝 外伝、ホビーショップ・エルゴの悪夢 HOBBY LIFE,HOBBY SHOPとリンク 外伝、鈴乃の真実 岡島士郎と愉快な神姫達とリンク ねここの飼い方EX ねここの飼い方EX2 書籍&イベント展開 *New* 『コミックマーケット83』 *終了しました 沢山の方々にお越しいただき、ありがとうございました。 やる気いっぱいもらいました! (神姫が何処にも売ってないという悲鳴多数と共に・・・(涙) ● 新刊1 ● 『HOW TO KEEP A CATGIRL MECHANICS』 表紙フルカラー/44p・オフセット印刷 一般向(資料・解説本) 頒布価格700円 『ねここの飼い方』に登場した神姫達の武装解説本になっています。 詳細設定と、写真たっぷり!実際に作れるよ!の見本的な内容でお送りします。 *手持在庫完売・虎の穴の通販のみ。 ● 新刊2 ● 『神姫の日常』 表紙フルカラー/28p・オフセット印刷 成年向(漫画) 頒布価格/600円 此方はアニメ版の神姫達を描いた本になっています。 祝、アニメ化! 内容も面白いですよねっ。 各新刊は虎の穴にて委託中です。 当日会場に来られなかった方は、是非ご利用くださいませ。 通信販売ページ(虎の穴) ● 新刊3 ● 『ねここの飼い方総集編・ねここ編&ネメシス編』 パッケージ/カラーコピー・CD-R媒体 ねここ編:一般向(小説&漫画) ネメシス編:成年向 頒布価格1000円 ねここの飼い方をCDにまとめてみようと思っています。 ただし間に合うかは色々と微妙・・・・・・ ●追記● 『dlsite.com』にてダウンロード販売を開始しました。 宜しければご利用くださいませ。 dlsite頒布ページ・直リンク 新しい物語へ…… えむえむえす ~My marriage story~ ご感想、ご要望やリクエストなどは、こちらへ どうも、ichgucです。いずれコラボしませんか? -- ichguc (2009-05-10 10 42 51) >ichgucさんへ いずれ機会がありましたら、その時は宜しくお願いします。 -- ねここのマスター (2009-05-12 19 25 45) ネメシスちゃんが装着してはずれなくなったのって「赤ずきんちゃんご用心」じゃなくて「あなたも狼に変わりますか」のような気がする -- 名無しさん (2009-10-30 10 11 47) す、すいません素で間違えてました……すぐに修正しました(大汗 -- ねここのマスター (2009-10-30 13 23 23) トップページからのXVがない・・・?XVを読む人はXIVから「続き」か更新履歴からどうぞ -- 名無しさん (2009-11-05 14 32 56) ま、またしても申し訳ありません。ちゃんと追加しました(大汗 -- ねここのマスター (2009-11-05 17 37 19) アガサさんは昔ストラーフだった気がするのですがこれはいずれ語られるのでせうか。それとも、深入りしたら消されてしまうのでせうか -- 名無しさん (2009-12-20 00 51 52) >名無しさん いずれ語られる予定ですので気長にお待ちください~。・・・消されるのは、まぁ(遠い目 -- ねここのマスター (2010-01-01 09 24 44) えむ★えく・フルカラーDL版を是非とも購入したいのですが、他サイトや認証無し版を販売する予定はございますか? dlsiteのユーザー認証形式が使用できないPC環境でして……。 -- 名無しさん (2012-01-11 10 20 32) >名無しさん はい、実は最初にUPした後色々考え直しまして、現在認証無し版に切り替えられないか訪ねている最中です。OKが出ましたら、またお知らせしたいと思いますので、すみませんが少々お待ちください。 -- ねここのマスター (2012-01-11 12 21 02) 差し替え完了致しました。これで大丈夫だと思いますので是非DLをお願いします。 -- ねここのマスター (2012-01-11 17 55 23) 差し替え、ありがとうございました。 えろえろやーー!! -- 名無しさん (2012-01-11 20 19 59) ありがとうございます。喜んでいただけたようで何よりですw -- ねここのマスター (2012-01-12 02 20 06) 番外編でアムドライバーのライドボード扱って欲しい -- げしもちゃん (2012-04-28 18 53 01) 名前 コメント 今日 - 昨日 - 総合 -
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メニュー トップページ +『過去ログ』 【2009】 5/12-8/31 9/1-4/30 ジオラマスタジオ 二次創作物 掲示板<ただいま閉鎖中> 公式 神姫NET 管理人の公式掲示板投稿履歴 wiki 武装神姫BATTLE RONDO」スレ まとめwiki リンク 当サイトへのリンクについて 梟遊の無駄書 更新履歴 取得中です。 ここを編集
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私を動かすのは闘志 マスターに命令されたからやるのではない 私自身が闘いを望むから 私は征く 鳳凰の翼の一翼として 鳳凰杯編 「蒼い翼」 差し込む日差しは青白い まだ奥様は寝ている様だったが、正直高揚していた私は充電もそこそこに起き出していた 高揚している・・・か 理由は一つ、間近に迫っている鳳凰杯だ 結局、私は選手として参加する事に決めていた 奥様と、この家に住む他の神姫も一応会場までは足を運ぶつもりの様だが、それは同時に開催される諸々のイベントの為だ 私は・・・そういう所では心からこの家の住人達と判りあう事が出来無い 否、それはある意味ではマスターにしても同じかも知れない 「神姫に人権を」と叫び続ける私のマスター川原正紀・・・そんなマスターだからこそ私の好き勝手にやらせてくれているのだろうが、同時にその行動原理に埋め様の無い私とのギャップを感じる 武装神姫は武装神姫・・・人ではないのだから人権等に意味は無い これが私の今の所のスタンスだった 人が命懸けで闘うと、悲しむ人が多いが、私達武装神姫は闘う為に作られたのだから、少なくとも戦う事に関しては、誰からも何も言われない 私達が私達らしくある為に必要なのは、人と同じ様な権利等では無い様な気が、私はずっとしていた 「つまりそれは戦士が戦士らしくある事の権利にも似て・・・か?」 馬鹿馬鹿しい。戦士である事に権利等要らない・・・自分が戦士らしくあろうとすればそれで良い 闘争を望む人々の熱狂と視線の中で闘う事が幸福だ 勝利の感動に酔い痴れる事が祝福だ 敗北の苦痛と屈辱に塗れる事が必要だ 何よりも幸いな事に、我々には戦場が与えられているではないか・・・! それで充分だった 「いかんな・・・考え過ぎだ。誰かに似てきたかな?」 私に必死になって闘う理由を問うて来た神姫の顔が浮かぶ 私の理由は、今はもうただ「戦士でいたいから」に絞られていた 闘いたいから闘う、そして戦う場は用意されている・・・闘う術も武器もあり、勝利の栄光もある それだけで既に私達は、人間より余程幸福だとすら思える 「・・・ん・・・おはよう御座いますクイントスさま・・・」 「ん?あぁ、おはよう、ヌル」 窓際に腰掛けた私の姿が、今の彼女にはどう見えただろうか? カーテンを揺らす風が、どこか熱い息吹を孕む春だった ぎしゅっ!ぎぃんっ!! 白刃が、閃く ほう、受けたか・・・真っ二つになると思ったが・・・ 受け止められたそこを支点に、私の体が宙を舞う・・・やはり彼女が、才能面では最高だ だがまだまだ・・・それを生かし切れていない 空中で姿勢を変え、落下ではなく着地の構え・・・襲い来る「魔女の剣」・・・そんな見え透いた攻撃にはあたってやれんな 私が、空中で、回避運動が、出来無い等と、何時言ったのだ?エルギール! エルギールの防剣を支えに、腕力で再跳躍。空中で太刀を振り、魔女の剣を迎撃、無事着地には成功する 着地点に打ち込まれる銃弾・・・『ストリクス』か。馬鹿め、私を狙う時は弾幕を使えとあれ程言っておいたのに、まだ「ワンショットワンキル」等と言う夢物語を追いかけているのか? ぎぃん 銃弾を受け止め、両断。そのまま刀身を跳ね上げて再び迫る「魔女の剣」を迎撃する 狙撃点の割れた狙撃手と、距離を取られた柔使い等、どうとでもなる 爆散する「魔女の剣」・・・面白い武器ではあるがその耐久力ではな 再度打ち込まれる銃弾・・・狙いが甘過ぎる。受ける迄も無い 掴みに掛かって来たエルギールを逆に掴んで、その力を利用して振り回す。 もう少し『待ち』に徹する事を覚えろ、余りにもこらえ性が無さ過ぎるぞ・・・エルギールの体に三発目が着弾する 狙撃がそんなに好きならミサイルで蟻でも射つのだな!凄まじい長距離と凄まじい小目標物だぞ 大体 私程度の動きを負えない様では 本当に高速戦闘に特化したアーンヴァル等相手では 射つ前にやられるぞ!! 2発射って外してしまった時点で、ストリクスは私に射撃の呼吸を読まれるという愚を冒している・・・これでは本来サイドボードを導入する意味も薄いが、今回は練習だ、使っておく事にしよう 「エンジェール!カームヒアーー!!」 ダッシュしながら叫ぶ。同時に転送されて来るサイドボード、バーチャルの空気に溶けて消えるエルギール 気に入りの濃紺のマントが消滅し、代わりに装備される白い翼と長銃 別に取り立てて珍しいものでもない。加速のみが目的の背負い型のダッシュブースターと、飛翔のみが目的の羽根付きグリーヴだ 右腋にホーンライフルという名の槍を構えて空中から殺到する羽根付き騎士か・・・使い古された絵面で面白くも何とも無い 両脚を振り回してジグザグに飛びながら、ダッシュブースターを目一杯に吹かす・・・ようやく四発目。仰角に修正するのが遅過ぎる 場所は既に割れている、あとは普通に狙いをつけて ぱすんぱすんぱすん 終わった 別にそんな長大でいかつい砲を装備せずとも、少し工夫してやれば市販ライフルでも充分反撃されにくい攻撃は可能だ・・・「ツガル」が何の為にこういう装備をしているか考えた事も無かったのか? ジャッジマシンの勝利宣言を、私は殆ど聞かずにログアウトしていた 「随分厳しく言ったじゃない?相当頭にきてたわよ?ストリクス」 「頭に来てくれないと困る」 兜を腋に抱えつつ、大げさに肩を竦める 「何でよ?」 「ストリクスがもっと技術を磨いてくれないと、私は誰から狙撃の技術について学べば良いんだ?」 噴出すエルギール。割と本気で言ったのだがな 「何それ?セカンドランカーの大物に習えば良いじゃない・・・ホント貴女ってちぐはぐだわ」 「気心の知れた相手から学んだほうが気が楽に決まっている・・・それにストリクスは堅実で努力家だ。やればもっと伸びる筈なんだよ」 「いっその事キャロねえやヌルにならってみたら?」 「キャロは狙撃は苦手なんだ・・・当然ヌルじゃ話にならん。むしろあの子はもっと蹴り技の訓練をだな・・・」 「あぁはいはい。ホントもうお腹痛いわ。神姫なのに笑い死にとか勘弁して欲しいっての」 相手が私だろうと下位ランカーだろうと同じか・・・私はこの子のそういう所がかなり気に入っている 「大体皆私を褒め過ぎるんだ。天才とかゆらぎとか、そんなものは大昔の負け犬が考えた逃げ口上だろうに」 「それ、あいつにも言ってたわね、もう耳にタコよ。婆臭い!」 「楽しそうだね」 団欒風景に割って入る十倍ストラーフ・・・じゃない神浦 琥珀 「注文の品、出来たよ」 言いつつ神姫大の黒いケースを三つ、私の前に並べる 「これはマイスター、ありがたい」 言いつつ早速開けて見る 「これは・・・」 出て来るのは計4振りの刀剣類だ ギミック付きの鞘に収められた厚手のダガーが二振りに、私が今使っているものよりやや柄の長い日本刀が一振り、そして「コルヌ」にはやや及ばないものの、かなりの長さと幅を持つ青錆色のロングソードが一振り 「密着戦での防衛力を重視した『ディフェンダー』と、少し居合いに使う事も考慮した『神薙Ⅱ』・・・そして君の音速剣を無制限に放てる耐久力の『鳳凰』だ」 『鳳凰』を手に取り一度振るう・・・心強い重みと重厚な外観が、強烈な破壊力と強度を予感させた 「振ってみて良いだろうか?」 「構わないけど、店の外にしておいた方が良いと思うよ」 相槌だけ打って店の裏手に回り、大き目の小石に向かって振り下ろす 硬い音は、両断の手応えより僅かに遅れて聞こえた 刃毀れは・・・無い 減衰したインパルスが、数十メートル先の電柱の張り紙を揺らしたのが確認出来た パワーロスが大きいが・・・まぁ慣れでなんとかなるだろう 「少し先太りになってて小回りが利きにくいけど、結構刃は薄いから、なるべく鍔迫り合いはしないでね・・・まぁ並みの武器には負けやしないと思うけど」 「パーフェクトです。マイスター。有難う御座います」 「『クイントス』お墨付きとあったら、ここいらじゃそれだけで凄い箔が付くからね。売名行為だよ。あんまり礼を言われると心苦しいな」 長大な割りに直線の刀身を鞘に収めるのは難儀したが、腰に佩いて見ると「コルヌ」よりは様になっている・・・それでも少し長いか?マントとあわせるのが難しいな 「鳳凰杯、あさってだね」 「あぁ」 「君みたいなのに僕みたいなのがこういう事言うのもなんだけど、頑張ってね」 「マイスターのこの剣と、私の誇りに賭けて!無様な闘いは曝しません」 一息に・・・抜けた。『鳳凰』を胸の前で両手で構え、掲げて見せる 青緑色のつやの鈍い刀身が、夕日に煌いていた 鳳凰杯・まとめページ 剣は紅い花の誇り 次へ
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武装神姫のリン 第8話 「ホビーショップへ行こう!」 「ほらほら、亮輔! 先行くよ~」 「ま、待て、俺の状態を見て言ってるのか…」 俺たちは茉莉の新しい衣服や日用品などの買い物に来ている。 というのも茉莉の通う大学がこっち(わざとこの辺の大学選んだんじゃないかと邪推できるが)らしく、 それで結構広いマンションに1人暮らしの俺の家が推薦されたそうだ。 もちろん親からの連絡もナシ。と思っていたが家に帰ると手紙が届いてた。遅いんだよ…… そして茉莉は家に着くなり俺の寝室の隣の空き部屋を占領した。 しかし家具はもちろん(クローゼットぐらいは備え付けてあるが)、持ってるのは大学で使う参考書、文房具のみ。 衣服の代えさえも3日分しか持って来てない。 そうしてさっきの手紙には「おまえがちゃんと買い揃えてやるんだぞ」との1文。 今日の騒動で手にした100万の小切手がとても尊い物に見えたのは内緒だ。 そして明日が日曜と好都合なので一気に買い物をしてしまおうということになった。 そうして俺たちは今、巨大ショッピングモールに来ている。 今の時点で俺の引くショッピングカートにはコレでもかというぐらいの物品が載っている。 「マスター、お力になれなくてすみません」 リンが苦しそうな俺を見て言う。 「いや、これは俺の仕事だ。リンもティアもほしいものがあれば茉莉に言えよ。今日はヤケだ全部買ってやる!」 「本当ですのね、ご主人様。 じゃあれとコレと……」 ティアは茉莉といっしょになってここぞとばかりにカートにいろんな物を押し込んでくる。 そろそろカートがいっぱいになろうかといった時、さっきまで物を1つもねだらなかったリンが聞いてきた。 「マスター、コレ……良いですか?」 「??」 リンが俺に見せたのは、神姫向けでは無い普通のぬいぐるみ。 テディベアだった。値段は……ゼロが4つ。 本場モノだった。 「良いぞ、まだまだお金はある。」 「ありがとうございます。 マスター」 そうしてショッピングモールでその後は茉莉専用のTVなどの家電製品を買った。 基本的に食料は買ってないのでそれらを全て宅急便で時間指定で届けてもらうことにして俺たちは昼食(コレもまたいつもは行かない高級志向なお店で神姫向けの特別コースもあった。)を取った。 その時点での出費の合計は。35万。 まだ65万余っている。コレなら今月は悠々自適な生活が送れるだろう。 そう思っていた。 帰宅しようとしたら、また茉莉が言い出した。 「近くにいい神姫センターを兼ねたお店知ってるんだけど、行かない?」 ティアやリンにはまだ昨日買う予定だった衣服などを買ってあげていなかった。 出来れば今夜にでも、もう1回出かけるつもりだったが家に着く家電製品のセットは俺が全部することになるだろう、 そう考えると体力が持たなさそうなのでこの際一気に済ませようと思った。 そうして俺が連れてこられたのは普通の町並みにある普通の玩具屋といった感じのお店。 店舗の規模に対して大きめの看板には「ホビーショップエルゴ」と書かれてた。 俺は茉莉に連れられて店に入った。 「店長、こんにちは。」 「ああ、茉莉ちゃんか、ひさしぶりだね。」 「今日は人を連れてきたよ」 そうして予想外の品揃えに驚いていた俺の首を引っ張ってきた。 「こんにちは~店長の日暮夏彦です。 よろしくね」 「は、はい、どうも、藤堂 亮輔です。」 「それにしても……茉莉ちゃんとはアツアツかい?」 「は? 意味が良くわかりませんが」 「え?彼氏じゃないの?」 「え~っと、彼氏ではないですね。 勝手な婚約が交されたりしてますが…」 「そうそう、彼氏じゃないよ~ まあ亮輔なら結婚してあげても良いかなってレベル」 「……そうか、亮輔君がすこし羨ましいな。 おっと、紹介しよう。ジェニーだ」 オレは目線を下げる、そこには……とても昔のバラエティ番組のキャラにそっくりなヴァッフェバニー 即ち素体が無く、バニーの基本セットにある胸像パーツを改造したボディのみがいた。 「ジェニーです。 当店にお越しいただきありがとうございます」 「ああ、よろしく。」 そんな感じで挨拶を済ませて、店の中にいるであろうリンやティアを探してジェニーにあいさつ……ってリンさん? ナゼオレのモモを思いっきりつねってるんですか? 「マスタァ…婚約ってなんですか? あとでお話を詳しく聞かせてもらいますね」 文字でたとえると「にっこり」な笑顔、でも額になにか血管みたいなのが浮いてる状態でリンはオレがもっているカゴにここれでもかといた勢いで店内の神姫向けパーツを入れていく。 「もちろんここでもヤケ買いですよね?マスター」 そんな、今まで誰も聴いたことの無いドスが利いた声を出さないでくださいリンさん…… そうしてオレのカゴにはリンによって選ばれた手製の衣装(なんでも専門家の手作りを品質そのままで量産レベルにしたものらしい)と、 この店オリジナルの武装パーツ(照準調整済みのコルトパイソン+スピードローダーセット、ストラーフのセカンドアーム向けの斬魔刀などコアな製品が多いか? それにティア用の新型アーマーやランディングギア、最新モデルのレーザーライフルも抜かりなく入れてある)や、なぜかうさみみ・うさしっぽといった愛玩向けのパーツが、 ティアによって店内の一番奥。子供は入っちゃいけないマニアックなコーナーからボンテージ衣装に鞭、 なぜか星座の戦士の使うチェーンまで同封の鎖セット、極めつけはろうそくって何に使うんだよソレ!!てな感じの代物が満杯に入っていた。 そして最後に店長と話していた茉莉が俺を呼ぶ。 「亮輔、 訓練機買わない?」 オレはそろそろティアの分の訓練機を買わなければと思っていたところだったのを思い出す。 で早速勧められた訓練機を品定めする。 最初に店長に勧められたのは店内で一番高い品だった。 だが、家にあるのがファーストランカー向け製品であることを話すと店長は倉庫から訓練機本体より少し小さめの箱を取り出してきた。 「そうなるとこれだな、 ファーストランカー向け製品は処理能力がハンパじゃない。 だからいちいち別に2個目を買わなくても追加モジュールで大丈夫だ。」 そうしてオレに渡されたのは追加の座席モジュールと接続ケーブル。そして補助のCPU、メモリがついた補助モジュール(形状は正に PCI Expressの拡張カードそのものだった。)のセットだった。 これで価格はランカー達に一番多く普及しているタイプの訓練機の半額である。 その価格に驚いていると店長はもう1品を俺に手渡す。 「そしてコレがウチ特製の追加モジュール。うちのセンターでバトルをした神姫のデータを利用したオリジナルの訓練パターンデータをディスクに入れて格安で提供してる、ソレ専用のドライブだよ。 もちろんデータの使用許可はマスターさんに承諾済みだしメーカーにも許可を取ってる。値段は3000円ポッキリだ」 「そんなことが……ウチのリンもティアも接近戦一辺倒で遠距離戦のパターンが不足していた所です。もちろん買いますよ!」 「商談成立だね、せっかくだからドキドキハウリンのデータディスクをサービスしよう。」 「ドキドキハウリンって?」 心当たりがないを俺を見かねてか、茉莉がフォローを出してくれた 「大会に何回も出てるときにハウリンにセーラー服とか着せてる女の子見たこと無い?」 「見た。そのときは写真小僧に囲まれてた気がするな。」 「その子、ここに衣装の提供してるのよ、リンちゃんがカゴに入れたのもそう。ちなみに彼女のハウリン強いわよ、でそのデータもがもらえるの、いいことでしょう?」 「そうだな、ありがたく貰っておきます。」 「どうも、じゃあ代金なんだけど……カゴの製品が、え~とこんなに多く買うお客さんあんまりいないからすこし手間取るなぁ」 店長がレジに製品を通していく、それにつれてディスプレイに表示される金額はどんどん上がっていく。 1万、2万、3万……10万、最後に訓練機がレジを通って15万を突破。合計の品数は46だった。 明らかに今日1番の売り上げだろう。 店長も少し満足げな様子で 「ありがとう、今後とも当店をごひいきに。 またサービスしてあげるよ。」 と言ってくれた。 そうして今度ここでフリーバトルをすること、リンとティアは神姫教室に参加させてもらうということを約束して、俺たちは家路についた。 電車に乗るときには遊びつかれたのか、リンもティアもかばんの中で寝息を立てていた。 そこに茉莉が声をかけてくる。 「寝顔ってかわいいよね……亮輔、リンちゃんの反応見る限り婚約のことは全く話してないみたいだね。」 「普通はそんなこと話す必要ないだろ、仮にもっと連絡が早ければ説明してたと思うけど。」 「そっか~、じゃあリンちゃんたちの反応も当たり前だね、マスターに突然婚約者がいるなんて知ったら普通怒るよ。」 「? どうしてだ?」 「ん~~~~もう、リンちゃんの気持ち考えてあげれば分かるでしょ? いままでに何も無かったとは言わせないわよ」 ふいに俺は2ヶ月前のことを思い出す。そう、ティアとの決戦前夜、俺はリンとキスをした。 そこで気付かなければいけなかった。リンは俺をマスター以上の存在と認識しているということにだ。 いや気付いていたはずだ、それなのに大会とティアのことでそれをごまかしてただけだった。 「リンは俺をそこまで……」 「わかった? なら明日までにリンちゃんに説明すること。でも絶対に傷つけちゃだめ。」 「ああ、でも俺は正式にお前との結婚を認めたわけじゃない、それも説明するぞ、いいな?」 「うん、それで十分。ちゃんと安心させてあげなきゃかわいそうだよ。」 「わかった、とりあえず帰ったら夕飯の準備だな。 昼飯が豪華すぎてギャップに驚くなよ」 「うんうん、期待しないで待ってる。」 そうして茉莉は最寄の駅についたことに慌てる俺を引っ張って電車を降り、そのまま駅前の桜並木を歩く。 俺が理由を聞こうと思ったところに唇を重ねてきた。 でもそれは1瞬。気がつけば茉莉はいつものようにスキップを踏んで先を歩いている。 でも振り返る瞬間見えたのは……涙。 そのとき、俺は茉莉の気持ちも理解してしまった。 ふいに並木道に強い風が吹く。 春の嵐、それはオレの心を表すようだった。 その夜、俺はリンに説明をした。 でもリンは聞かなかった。そして初めてマスターである俺に逆らった。 そうしてリンはその日から茉莉がいるときはもちろん、普段もあまり喋らなくなった。 ティアも少し俯いたままになることが多くなる。 それから2ヶ月。 茉莉はいつもの様に大学へ行くし、俺は仕事をする。 リンとティアもあの時買った追加モジュールとデータディスクで腕を上げている。 戦績も最初はセカンドリーグの猛者たちに蹴散らされていたが最近は勝率も上昇傾向だ。ただリンは戦法を変え、無茶苦茶な闘いをするようになった。 そして勝利してもそこに以前のような無垢な笑顔は存在しない。使命感に駆られるような少しこわばった笑顔だ。 ネットでも「あの正々堂々とした黒衣の戦乙女が不意打ち! 何がおこったのか!」 などと、主にサードリーグのランカー達の間で噂になっている。 そして日常でも何か歯車がかみ合ってない。そんな感じだ。 日に日にリンと茉莉の関係が徐々にではあるが悪化していった。 ~燐の9 「決断!?」~
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煌く粒子を撒き散らしながら、『ルシフェル』が天を舞う 空中戦に特化した『ウインダム』を、速度でも運動性でも装甲でも火力でも上回るその様は、決して単純に高級パーツを組み合わせただけではない 鶴畑興紀の調整能力の確かさと、的確な指示、地味だが効率的な『ルシフェル』自身の錬度も含めた、重厚で実のある強さだった 『ウインダム』自身は知らないが、「最強の武装神姫」を目指して敗北した神姫からデータを奪い、次なる『ルシフェル』に移植するという件の非情な行為迄含めて 隙の無さこそが鶴畑興紀と『ルシフェル』の強さの秘訣であった そしてその「取り付くしまも無い」感じが、『ルシフェル』自身のソリッドな印象と相俟って、かなりのファンの心を掴んでいるのも確かだった まさに今、ルシフェルに追いすがられている『ウインダム』自身がルシフェルのいちファンであり、彼女の機械的な振る舞いと言うのは、その実ミーハーなファンがアイドルのコスチュームを真似するのとなんら変わる所は無かった 鳳凰杯編 「幽鬼と魔王」 内心の動揺と高揚を表情に出さない程度には、ウインダムの『真似』は徹底していた それは、彼女より格下の神姫相手にとっては、次手が読めない不気味さと威圧感をもたらしもしたが、明らかに格上であり、しかもその模倣のオリジナルでもあるルシフェルからしてみればお笑い種を通り越して既に怒りすら禁じえないものであった (誰が好き好んでその様に振舞っていると・・・!?) 無論、口に出しもしなければ表情にも表しはしない その事で後々質問されるのも言い寄られるのも面倒だ ルシフェルは無駄と面倒を嫌う それは今迄破棄されてきた幾多のルシフェルに染み付いて来た鶴畑興紀の思想と言うよりは、『今、このルシフェル』となったストラーフの個性だった 例え内心でどう思っていようが、破棄されるよりは従順な僕であろうとする性質は、武装神姫らしいといえばらしいが、人間的といえば限りなく人間的でもある 故に、劣化コピーの存在を快く思わないのも止む無き事だった ごう!とまた一段と距離が詰まる。速度で勝り、バランスも悪くない以上、パーツ単位での性能ならば公式装備ばかりのウインダムより遥かに上なのは明白であった 今回のバトルに併せて、ルシフェルには地上戦装備は最低限しか装備されていない。そして、大柄な翼とゴツゴツした鞭状の武器、凶悪な爪を備えた「サバーカ」を装備した姿は、『ルシフェル』というよりは『サタン=アポカリプスドラゴン』を連想させるものだった サイドボード迄含めて、バトル毎に全て切り替えるのが鶴畑興紀の戦略であり、それらを全て使いこなして見せるのがルシフェルに求められる資質であった その戦略は『クイントス』と同様のものだが、パーツの質に於いて圧倒的に優秀であり、鶴畑興紀のパーツ選択のセンスも、流石はファーストランカーと言う他無かった 高速機動武装神姫にしか不可能なマニューバをいくつもこなしながら、二重螺旋状に上昇してゆく二体の神姫 だが、そのらせんは徐々に先細り、両者の距離が10smを切る頃には、ウインダムのSMGの弾丸も尽きていた 『頃合だな・・・仕掛けろ、ルシフェル』 命令と共に機銃を捨て、急接近して鞭を振るうルシフェル 急制動に回避が間に合わず、あえなく絡め取られるウインダム がきぃんっ!! 遅れて、片脚の爪がウインダムの細い腰を掴む この一瞬の格闘攻撃を確実にヒットさせる為に、速度を調整して追い抜かず、離されずの間合いを計ったのだ 『チェックメイトだ』 鞭とのバランス取りも兼ねて手首に装備されていた槍剣が、ウインダムの喉を貫いた 「いやいや、最近はサードやセカンドにも優秀な武装神姫が増えて来ていて、私も少し油断すれば危なかったかも知れないですね」 無数のカメラに囲まれながら謙遜を口にする興紀は、いつもの「貴公子」の顔だった この種の下級ランカーに対する激励リップサービスは彼のいつもの事でもあったし、「強さの求道者」として知られる場合の彼ともそうブレるものでもなかった 要するに、スターとしての資質を、彼は充分に備えているのだ 一通りのインタビューの合間に、ルシフェルと言葉を交わしたウインダムも、普段の「人形がましさ」を維持出来ずに、半ば舞い上がっているのが傍目にも明らかだった 当然、それよりもさらにこういった場に慣れない深町昭は尚更だった (馬鹿馬鹿しい) わざとらしい握手をかわすマスターふたりから目を逸らしたルシフェルは、その視界の隅に奇妙な男を見かけた 何故奇妙と感じたのか、その種の直感をあまり是としないルシフェルには、後々になるまでその理由は判らなかったが、兎角野心に満ち満ちた目をしている事だけは、その時点で既に判った 報道陣が去った後に、残されたその男が取り巻きをすり抜ける様に興紀に迫った時に、その表情にあった不敵な笑みが、興紀に媚を売るやからとは違う、一種の迫力を生み出すのに一役買っていた 「見事ですね、流石は鶴畑興紀と『ルシフェル』だ」 一瞬、興紀の顔に浮かんだ驚愕の色を、ルシフェルは見逃さなかった 「・・・馬鹿な・・・!?」 「お久し振りです。そちらも変わりなくご健勝のようで何より」 「貴様・・・性懲りも無くまだ生きていたか」 「おっしゃる意味が判りませんな、私は別に一度も死んだ事はありませんが?」 見つめ合う二人の男。その間にある緊張感を、ルシフェルはあまり愉快なものと取らなかった 「ご安心下さい。貴方がたが抜けられても、G計画は順調に進行していますよ・・・まぁ今声を掛けたのは偶然見かけたからであって、進捗状況を示すサンプルも何も持って来てはいませんがね」 「!!」 「今は皆川彰人という名で生活しております。貴方がたのご好意を持ちまして店のほうも順調ですよ」 「ではまたの機会に・・・」 「・・・亡霊め」 去ってゆく男の後姿を見送って、興紀は一言だけ漏らし、後は普段の「冷酷」な顔に戻った (亡霊・・・?) その言葉の響きに、ルシフェルはらしくないうすら寒さを感じていた 剣は紅い花の誇り 鳳凰杯・まとめページ
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触手と美咲さん こんにちは。フブキタイプの美咲です。主である先生の神姫をさせていただいています。 今日も今日とて、広大なテーブルの上を手磨きで磨いております。このテーブルは本当に広く、バトルフィールドとして使用できそうなほどです。バトルフィールド・テーブル。……響きがもう不人気確定ですね。 このテーブル、実はそれほど汚れていませんし、毎日磨くほど汚れもしないのです。それでも私が磨くのは、私が起動したての時に先生に『私にお手伝いできることはありますか?』と聞くと『いいえ、何も。あなたは何もしなくても大丈夫ですよ、美咲さん』と言われたのです。その時、私は、主である先生のお役に立つことのできない不甲斐ない駄目神姫なのだと絶望すると、『そ、そんなに落ち込まないでください! ……そ、そうだ、このテーブル、このテーブルを磨いてください! それはもう、顔が写るが如くピカピカに!』といった具合で、先生から初めて仰せ付けられたご命令なんです。 あの時は、先生が私に求めるものが何なのかまだ理解しておらず、とにかく役に立たなくてはと必死だったのです。今では『何もしなくていい』と言われたらお言い付け通りきちんと何もせず待機できます。 ……何もしないのに、きちんと、というのはおかしいですね。 「みっさっきっさぁーん♪」 どうやら、先生がご帰宅なされたようです。 「はい、何のご用でしょうか」 「本日もまた、美咲さんの為に仕事時間を削って新たなる装備を開発いたしました!」 仕事時間は削らないでください。いや、先生のなさるお仕事に特定の拘束時間がないのは重々承知なのですが、少しは会社側の事も慮ってあげてください。 「それは、どんな装備なのですか?」 ちょっとドキドキしながら、先生に尋ねます。私のため、という言葉に胸が高鳴ります。 「はい。この装備、その名は『怪しい触手EX』!」 私の胸の高鳴りを返してください。 先生の手の中には、うねうねと怪しくうねる物体。あれを装備と呼んでいいのでしょうか。装着されてないのにあんなに動いています。おかしいです。 というか、触手って……やらしいイメージしかないじゃないですか! 「それをまさか、私に装備しろと?」 「はい、そうですが」 「慎んでお断り申し上げます」 いくら先生の頼みとはいえ、あんな怪しさ満載っぽい装備を着けるなんて、無理です。あ、名前に既に怪しいってついてました。 すると、先生は私の手を取り、真摯な表情をしました。 「この装備は、美咲さんの戦闘データや行動パターン等を参照して、美咲さんの動きにこと細やかに対応します。ですから、逆にいえば美咲さんにしかフィットしない、美咲さん専用装備なのです。扱いは少々難しいかも知れませんが、美咲さんなら使いこなせると信じていますよ……」 「先生……」 で、結局装備してしまう私を、誰が責められましょうか。だって、『信じていますよ』なんて囁かれるように言われたら、是も非もないじゃないですか。それとも、私が軽い女なだけなのですか? まあ、装備するだけなら、まだいいと言えましょう。ですが状況はさらに悪いです。先生に言われるまま流されるまま、気が付けば行き付けの神姫センター。先生はこの神姫センターではかなりの有名人なので、自然と視線が集まります。 「おいみろよあのフブキ。触手リアルwwwキモwww」「さすが先生wwwやる事パネェwww」「うわぁ、動いてる……」「触手フブキハァハァ……」「あの触手でセルフ触手プレイですねわかります」 ……先生、帰りましょう。 「さて、対戦相手を探しましょう」 「やるんですか! この装備で!」 「もちろんです。でなければわざわざ神姫センターに足を運ぶこともありませんよ、美咲さん」 確かに、新装備といえばイコールで対戦というのが今までの流れでしたが、まさかこんな武装とはとても呼びたくないイロモノな代物でもバトルすることになるとは思いませんでした。 「触手ですと!? そう聞いては黙っていられませんですね!」 シュバッ! と、私たちのいる待ち合い席に神姫が一体やってきました。その子はマリーセレスタイプです。 「この地区一の触手使い、マリーセレスのステルヴィアがお相手致すですの!」 ババーン、といった感じで、ステルヴィアさんは高らかに宣言します。その腰には、恐らくカスタム品と思われる、通常のマリーセレスタイプのよりも長い触手がうねうねしてます。正直怖いです。 「というわけで、お相手お願いします先生。あ、僕はカシワギ・ケイゴと申します。どうも初めまして」 「おや、これはこれはどうもご丁寧に」 先生とケイゴさん(ぽっちゃり系)が固く握手をし、私たちはポットへ運び込まれていきます。 「では、いつもの如く、試合開始直前になってからの装備説明をさせていただきます」 「もう少し事前に、できれば自宅にいる時点でしていただきたいです」 しれっと言い放つ先生に、私もしれっと返します。ですが無視された模様。 「今回の装備であるこの『怪しい触手EX』ですが、なんと美咲さんの意志にあわせて動いてくれるという、画期的な装備なのです」 「……画期的? 意志に合わせて動くというなら、プチマスィーンズもそうなのではないでしょうか」 私が言うと、先生は指を左右に振ります。 「いいえ、あれらとは一線を画します。美咲さんの意識、無意識、思考パターン、防衛本能等々、とにかく美咲さんの脳内を忠実に反映致します」 「え゛」 はっ、と振り返ると、ホウキを持って掃き掃除する触手、雑巾で拭き掃除をする触手、神姫センターの出口に向おうとする触手、先生にハートを飛ばす触手等、確かに私の頭の中をトレースしている。 「犬の尻尾の触手バージョンですね」 「タチが悪すぎます! 私の思考がダダ漏れじゃないですか!」 先生にハートを飛ばす触手を恥ずかしさから必死に絞り上げますが、一向に堪える様子がありません。く、所詮パーツと言うわけですか。 「でもそれなら、私じゃなくても操作可能じゃないですか?」 ハートを飛ばす触手を玉結びにしますが、自動的にシュルシュル解けていきます。忌々しい! 「いえいえ。普通の神姫であれば、自分の意識、無意識を制御できずに暴走してしまいますよ。この装備は、自我を、アイデンティティーというものを確率した神姫でなければ制御できません」 「……つまり、どういうことですか?」 先生の言ってることはいまいち要領を得ません。自我やアイデンティティーなら、私だけでなく、どんな神姫も持っているはずです。 「では、簡単に一つ聞きましょう。“あなたは何ですか?”」 先生の質問に、思わず小首を傾げてしまいます。私に追随して二本の触手もくいっと曲がります。 「それは……難しい質問ですね」 自分が何なのか。どの観点から答えればよいのか。武装神姫の中での何かであるなら、私はフブキタイプであると答えられます。私単体としての何なのかであるなら、主である先生の神姫、美咲と名乗れます。ですが、そういう限定的な条件無しの、そう、この世界に存在する存在としての何なのか、と問われているとしたら……私は、どう答えればよいのか。 ……自分でも何を言ってるのか、わからなくなってきました。 「まあ、そういう事なのです」 先生のお言葉に、意識が現実に引き戻されます。と同時に、触手も再び活動を始めました。触手達もどうやら私と一緒に深い思考に陥っていたらしく、一切の動きを停止していたようです。 「……やはり、わかりません。どういうことですか?」 「ま、小難しい話は後にしましょう。今はレッツバトルです!」 誤魔化すように先生は笑い、私をポットに収めます。 「フッフッフ、いよいよ来ましたですの。私とあなた、どちらがより優れた触手使いであるか、今ここで決着をつけるですの」 「いや、私は別に優れてなくていいです」 ステルヴィアさんの言葉に即否定の返事を返します。 「フフフ、とても謙虚なのですの。ですが、私には見えますの。あなたの中に眠る、触手への限りなき欲求が、潤うことのない渇望が!」 「どこにそんなものが見えてるんですか……」 私の触手も……いえ、私のなんかでは決してないですが仕方なく装備している触手も、私に同調してうんざり気味に左右に揺れました。 危ない……危うく触手を自分のものとして認めてしまうところでした……。 「ウフフ……わかっていますの。あなたも早く戦いたいのですね。長々と失礼いたしましたですの」 「何も分かってないじゃないですか!」 「まいりますの!」 こちらの意志や発言を完全無視して、ステルヴィアさんは動き始めた。通常より長い触手パーツはどうやら足の役目もあるらしく。物凄い複雑な動きで素早い移動をこなします。よく絡みませんね。そこはやはり、地区一という実績の裏付けなのでしょう。 「って呑気にしてる場合じゃない!」 私は取り敢えず、手近な障害物に身を隠します。地区一の使い手相手に真正面から挑むほど、私は自信家ではありません。 あ、失礼いたしました。今バトルしているフィールドは、遺跡〔砂漠〕です。砂漠の中に、朽ちた遺跡が建っているだけのフィールドです。 「隠れても、無駄ですの!」 ステルヴィアさんは物凄い早さで平行移動。すぐに障害物の裏に周り込んできました。が、予測済みです。私の触手が、ステルヴィアさんの足下から迫ります。 ……ハッ、私の“仕方なく嫌々装備している腰パーツにくっついている触手”が、です。決して、決っっっして私のではありません! 「フフ、無駄ですの」 なんと、下から迫る触手が、ステルヴィアさんの触手に踏みつけられて阻止されました。このままでは釘付けにされてしまうのは確実なので、すぐさま踏まれた触手を本体から分離し、迫るステルヴィアさんから距離をとります。 「逃がしませんですの!」 シュルシュル、と、こちらの触手とは違う、機械的シルエットの触手が全て伸びてきます。私も対抗して触手を伸ばし、絡め取ります。奇しくも、触手対触手の真っ向勝負となりました。 「く、や、やりますの……」 「あのー、なんだか凄い接戦に見える最中に申し訳ないんですが……」 「な、なんですの!」 全ての触手を伸ばしきり、凄い形相で力勝負をしているステルヴィアさんに一言。 「私、まだ触手余ってます」 シュルシュル、と、ステルヴィアさんの触手を絡めている触手とは別の触手をステルヴィアさんに見せます。あ、青ざめた。 「な、なんてことですの! 数の差で勝負が決してしまうなんて……やはり、戦争は数だったですの……」 というわけで、全ての触手を絡め取られて抵抗できないステルヴィアさんを、私の触手で絡め取ります。 ……否! 私が“仕方なく嫌々装備している腰パーツにくっついている触手”が、です! 決して、断じて、私自身の触手ではありませんし、私が望んで装備した触手でもありません! 「くっ……ですの」 「勝負は決しました。大人しく降伏してください」 「……何をおっしゃるですの? なぜ、私が降伏しなければならないですの?」 「へ?」 な、何なんですかこのステルヴィアさんの余裕発言。まさか、まだ隠しダマが!? ゆ、油断できない相手です! 「触手勝負に置いての敗北とは、相手の触手によって高ぶらされてオーガズムに達した瞬間と、古より伝えられているですの」 「……は?」 ……言ってる意味を理解できない。いや、個人的意志で理解したくないです。 なんか、筐体を囲む人々から「触手・プレイ! 触手・プレイ!」なんてコールすら聞こえてきます。ケイゴさんに至っては、高性能そうなカメラを構えて鼻息を荒げています。 ……先生! 助け船を是非! 「美咲さん、あなたの超絶テクの見せ所です! さあ、皆さんのご期待に沿えてみせましょうぞ!」 先生!? 「さ、さぁ、はやく、めくるめく快楽と官能の世界へ、私を連れていってですの!」 ステルヴィアさんもなんでそんな艶っぽい表情と潤んだ瞳でこっちを見てるんですか!? ……な、なんなんですかこの異様な雰囲気は。まるで常識的な私が非常識のような、イレギュラーのような、そんな雰囲気は。もしかして、周りの皆さんのほうが正常で、私が異端なのでしょうか。 ……そうですか、私が異端なのですか。ならば、正常化を計らなければ……ふ、ふふ……あはは。アハハハ。アハハハハハハ! アハハハノ\ノ\ノ\ノ\!! 「あ、そんな、いきなり激しっ! だめ、そんなとこ、深い、深いですのぉぉぉ♪」 私が次に正常に戻ったときには、身体中をあらゆる液体やグリスで濡らしたステルヴィアさんと、勝者を告げるジャッジが私の名を宣告していました。ギャラリーの興奮も最高潮のようです。私が正気を失っている間になにが起きたのか……考えたくもありません。 まあ、前後の記憶と状況からナニがあったというのは想像できますが……。 「お見事です、美咲さん。あなたの触手使い、実に見事でした」 「こんなにも誉め言葉が嬉しくないという状況も珍しいですね」 ああ、もう嫌だこんなの……。 ポットから出て開口一番、先生は私をお褒めくださいましたが、ちぃっとも嬉しくありませんでした。何故でしょう。触手の所為です。 「……参りましたですの。今回は私の完敗ですの」 私たちのいるブースに、ステルヴィアさん達がやってきました。ステルヴィアさんは触手を器用に使い、私の目の前に降り立ち、ひしっと私の手を握ってきました。 「美咲さん……あなたこそ、この地区一の触手使いに相応しいですの! 私が認めるですの!」 「いや、いりませんそんなお墨付き」 迷惑極まりありません。 「そうですの……なら、仕方ありません」 そう言って、ステルヴィアさんは私から離れます。どうやら、やっと私の気持ちに気付いてくれたようです。 「地区一では足りないと言うわけですのね! では、そう、あなたは今日から触手使いの中の触手使い、『触手マイスター』を名乗るといいですの! それだけの実力を、あなたは私に示したですの!」 ……訂正、気付いていませんでした。 「いりません!」 「まあまあ美咲さん、せっかくくれると言うのですよ。貰っておきましょう」 「断じていりません!」 「タダですよタダ」 「いくらタダでも、後から高くつくようなものはいりませんから!」 そして先生、なぜそんな二つ名をプッシュするんですか! イヤですよ触手マイスターなんて! 『触手マイスター』美咲。イヤすぎます!! なんか、私の名前まで卑猥に見えてくるじゃないですか! 「触手マイスター殿、気に入っていただけたようですの」 「まったく真逆の感情をこれでもかと表に出しているのに、なぜそんな答えがでたんですか!?」 「いいではありませんか、『触手マイスター』美咲さん」 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」 結局、私の自害寸前の説得(「触手マイスターと呼ばれるくらいなら死にます」「すみませんでした美咲さん! ですからその刃をお納めください!」なやり取り)によって、何とか変な二つ名は付きませんでしたが、ステルヴィアさんからは「触手マイスター殿」と呼ばれるようになってしまいました。 あ、触手ならその場で焼却処分いたしました。 「ところで先生、結局、バトル前に言っていた、神姫の自我とは何なのですか?」 「ん、ああ、そういえばそんな話をしてましたね」 忘れていたようです。今は帰宅途中の車内。助手席から先生を見上げます。 「バトル前、美咲さんに問いかけましたよね。「あなたは何か」と」 「はい」 私は結局、その問いには答えられなかった。今も、だ。 「私はですね、思うんですよ。その問いに答えられなくなった神姫こそが、自己を確率し、人のような自我を、アイデンティティーを手に入れた神姫ではないか、とね」 やはり、先生のおっしゃることはよくわかりません。自分が何かがわからない状態が、なぜ個人として成り立つのでしょうか。 「神姫は人によって製造され、この世に誕生します。それによって、神姫は一定の知性を最初から備えているのです」 「はい」 なんだか違う話を始めたような気がしますが、聞きに徹します。 「であるからにして、目覚めたばかりの神姫に「あなたは何か」と聞いても「武装神姫である」としか返りません」 確かにそうです。自分が何か、と聞かれたら、デフォルトの記憶の中から、自分が武装神姫であるというデータを引き出し、相手に答えます。それが、普通の神姫です。 「ですが今日、美咲さんに同じ質問をしたら、「難しい」と答えました」 「はい、確かに」 そう、普通なら武装神姫ですと答えればよいものを、私は迷いました。確かに武装神姫ではありますが、それだけではありません。先生の神姫であるし、美咲という、私だけの名もあります。ですから、何か、と聞かれても、それがどの答えを求めての問いなのか、わかりません。 また逆も然り。私が何か。それに対しても明確な答えが出せません。武装神姫というのも、先生の神姫であるということも、美咲という名前も、すべて後付けのような気がします。自分というものは何なのか。考えれば考えるほど輪郭がぼやけていき、やがては、自分は本当に武装神姫なのか、という、馬鹿げた考えに至ります。それはつまり、確固たる“個”を無くしているということではないでしょうか。 「……やはり私にはわかりません。なぜ答えられないのが、アイデンティティーの確立なのですか?」 「武装神姫が、自分は武装神姫の何タイプであると言うのは、確かに全と個を分けた考え方でしょう。しかし、明確に個を答えられるのは、それが“個”であると教え込まれているからです。そして、その“個”は“全”に所属する全ての個体に教え込まれています。 “全”に与えられた“個”……これは結局、“全”ではないでしょうか」 ……。やはり、先生のお言葉は、矮小な私では理解できません。 「完全なる“個”、すなわち自我、アイデンティティーとは、“全”から教えられたものではなく、それに対して何らかの懐疑的な思考を行う事、あるいはその過程ではないかと私は思います」 ですが、先生の言わんとしていることはなんとなくですが、わかります。 「つまり、全と個をはっきり隔てることがアイデンティティーではなく、全と個を隔てようと思考する事がアイデンティティーだ、ということですか」 「……さぁ?」 盛大にずっこけました。さぁって……。 「あくまで私の考えがそうである、という話です。もしかすると、起動したての神姫のように、自信をもって自分を語れる者こそがアイデンティティーを持っているのかもしれない。いや、そもそも、アイデンティティーというもの自体……」 途端にブツブツと、私にすら聞き取れない程度の言葉で呟き始める。あれは多分そう、思考のスパイラル。自己を考えた私と同じく、自身の思考をさらに思考し、それすらも思考する。永遠に終わりのない思考の連鎖。今、先生はそこにいる。 「先生っ!」 「……あ、おお、すみません。少し考え事を……いや、あー……」 そう呟いた次の瞬間、先生は伸びをして首を鳴らしました。 「いやー、考えても答えなんて出ませんね。そんな非効率的で時間の浪費以外の何者でもない行為、やめてしまいましょう!」 ニコ、と私に向き笑いかけてくれる。ですが今、私たちはそれどころではないと先生は気付いているのでしょうか。 「それもよろしいですが前、前ぇぇぇぇ!」 「ん? うをぉぉぉ!?」 先生の車は、華麗なドリフトターンを決め、無事ガードレールとの接触を避けました。 今度から運転中には話し掛けないよう、心掛けます……。
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第一話:潜入姫 ……目の前の状況を確認してみようと思う。 デスクの上を俺がトイレに行って戻ってきた僅かな時間で俺の部屋に紛れ込んできたちっこい蒼髪の人形が正座して占拠している。 この人形は確か、武装神姫なるものだったような気がする。 武装神姫とは俺の知る限りでは色々と着せ替えて戦わせる今、大流行なものだとか聞いた事がある。 尤も、それは子供と俗に言うオタクと呼ばれる人種が主であり、ただの一般人である俺が持っている事がバレれば体面上、よろしくない事が起きるのは目に見えていた。 大学生以上にもなってくると野郎が人形を愛でる事をバレたら、気味悪がる人間が続出するのは言わずとも誰もが考えている事だと思われる。 俺もそんな中の一人だ。正直、目の前の事実を許容したくない。これが幻である事を切に願いたい所だが……。 「あの……。お邪魔してます……」 「あ、ああ……」 蒼髪の人形はご丁寧にも敬語で部屋の主である俺に挨拶をして、ものの見事に幻という説を完全に否定した。 動くのは知っていたが、喋る上に敬語を操る思考がある事には驚いた。最近のAI技術はここまで来たのかと素直に感心せざるを得ない。 「……誰だ? お前?」 しばらくの静寂の後、俺は何とか目の前の事実を見て、問いかける。 「私は……××××です。マスターに捨てられて猫に振り回された果てにここに放り込まれた者です」 イマイチ理解できない俺はそれについて詳しく聞いてみると、何でもあまりにも勝てず、別の神姫を買ってそれでやってみたら勝ち始めたため、役立たずなこの……××××を捨てたらしい。そうして町の中を冒険して遂にバッテリーが尽きかけの極限状態となり、俺の部屋に入り込んだらしい。 ―― ……おいおい。役に立たなくなったらポイですか。そりゃ、あんまりだろ。 見た限り、心があるってのにそれを考えてやれないのは流石に少なくともオタクではない事を主張する俺でも酷い話だと思える。 「なるほどな。同情するよ」 そう思う俺には二つの選択肢がある。一つは非情にもバッテリー切れを待ってそうなったらバラして売り払う事。とりあえず需要はあるのだから売ればそれなりの値段は付くのかもしれないから普通ならこれをしてしまうだろう。 そして、もう一つは……、 「あの……」 「あ?」 「……貴方にお仕えさせては頂けないでしょうか?」 やはり頼まれたが、こいつを引き取る事だった。確かに俺は武装神姫を持っていないから引き取る人間としてはうってつけかもしれない。 だが、これを持ってバレれば体面上の問題が発生する。それは俺にとって少なからず不都合な事である。 「お願いします! 何でもしますから!!」 バッテリーが無くなりかけにもかかわらず突然、必死に××××が叫ぶ。 死にたくない。このままで終わりたくない。 そんな真剣な声と必死な表情が不覚にも俺の心に鋭く突き刺さった。 ――そんな顔をするなよ……。切り捨てられなくなるじゃないか……。 非情になり切れない俺は俺自身に呆れ果てる。『自分の欲望に忠実に生きる』というのが俺の持論だってのに……。 しかし、目の前の蒼髪の嬢ちゃんの顔をブルーに染めるのも寝覚めが悪い。俺はここで一つの妥協案を出す事にする。 「……わかったよ。とりあえずしばらくは面倒を見といてやる」 そう。少しの間だけ世話して他のこいつを大事にしてやれそうな奴に渡す。それが俺にとっての第三の選択肢だった。 しかしそれは自分が神姫を持っていた事をその人にバラす事にも繋がる。非情に矛盾していて危ない選択でもあった。 「ありがとうございます!」 仕方なく了承した俺に××××は満面の笑みで礼を言った。 バッテリー切れかけなのに律儀なこったなぁ……。とため息をつきながら俺は苦笑する。俺は迷い気味だってのに……。 「いきなり押し入ってお願いするのは何ですが、私のクレイドルをゴミ置き場から回収して頂けないでしょうか?」 「クレイドル?」 突然の質問に俺はオウム返しをした。どうもそれは大事な物なのはわかるが、俺にはイマイチよくわからない。 「神姫の充電に必要な機材です。幸い、私と一緒に捨てられてあるので回収すれば使えると思います」 ……随分と贅沢な奴だな。機材もまるごと買い換えたのかよ。となると相当こいつを使い回してもダメだった事が推測出来る。神姫の武装はテレビで見たことがあったが、心があるという事を含めるとこいつとマスターとやらは絶望的に相性が悪そうだった。 ―― ……本格的に同情したくなってきたなぁ、おい。 「なるほど確かにそれがないとマズいな。どこのゴミ置き場にあんだ?」 「そこまで正確には……すいません……」 「謝らんでいい。今からゴミ置き場を順番に回る。見覚えのある場所があったら教えてくれな」 「わかりました」 「おし。行くぞ」 俺は大きめの鞄に××××を隠し持って、家を出ると自転車に乗って駆け出した。 彼女の話から考えると猫がどの位を縄張りにしているかにもよるが、そう遠くはないはずだ。少なくとも俺の住む町から外は出る事は無い。 まず、一つ目。かなり物が煩雑しているが××××はここではないと言う。確かにそれらしい物は残念ながら見つけられなかった。 ただ、収穫もあった。何やら黒装束らしき装備だった。丁度、××××は丸裸なため、折角なのでもらって行く事とする。 気を取り直して二つ目。ここでは鎌が見つかった。厳密にはシックルに分類されそうな片手持ち式の代物だ。 幸運にもこれで最低限の装備が揃った。まともに戦う事も出来るだろう。 だが、バッテリーが無くては話にならない。……そういえば××××からの反応がない。遂にバッテリー切れを起こしてしまったのかもしれない。 ――全く、何でこうして得体の知れない人形の為に頑張っているんだろう。今なら匙を投げられるってのに……非情になりきれないな……俺。ただの人形ならすぐに捨てられただろうにさぁ。 本当に馬鹿馬鹿しい限りだった。なんでこうしているのか、自分でも不思議に思う。本当なら投げ出したい気持ちにあるはずなのに××××の真剣な眼と必死な表情が俺の良心を揺さぶり、それの邪魔をする。 心があるといっても人形だってのに何でなんだか。 ―― ……おっと、そんな事を考えている場合じゃなかった。三つ目は……と。 迷いを感じながら一時間後、遂にクレイドルを発見した。何やら痛いイラストの入ったパッケージに箱詰めされた状態で放置されてあった。 特に理由でも無ければ携帯で写メでも撮ってネタにしたいが、今はそれどころではない。 俺は周りに人がいない事を確認すると素早く痛い箱を開け、中身……クレイドルと説明書を回収し、さっさとその場を後にした。 これでひとまずは落ち着けそうだ。 「で、俺は隠れオタクになったって訳か……」 そんな独り言を言って俺は苦笑し、とりあえず××××をどうしたものか考えながらゆっくりと帰る事にする。 あんまりオタクがどうこうするのに無関心な俺がオタクと同じ事をしているとは世の中わからんものだ。 ―― ……厄介な拾い物をしちまったなぁ。 「ん……」 説明書に従い、クレイドルに××××を充電して数時間後、彼女はゆっくりと目を開けて目覚めた。 「おはよう。よく寝れたか?」 「はい。お手数掛けました……」 俺が声をかけるや否や××××は申し訳なさそうに頭を下げた。ここまで謝り癖が付いてしまっているとなると相当、前のマスターとやらにやられてしまったらしい。とりあえず……前のマスター様からもらった物は全て破棄してやる。 「謝らなくていい。それは大事だからやったまでだしな。それとお前は××××じゃない。今日からお前は蒼貴だ」 「ソウ……キ……?」 「蒼い貴石と書いて蒼貴だ。……どうだ?」 彼女は与えられた名前の響きを確かめ、嬉しそうな顔をして頷く。 「……はい。わかりました。どうぞ、そうお呼び下さい。……貴方の事はなんとお呼びすればいいですか?」 「オーナーとでも呼んでくれ」 「わかりました。オーナー、よろしくお願いいたします」 「あいよ」 これでマスター様とやらが残した異物である名前と主に対する呼び名は消去した。これでしばらくはやっていけるかな……。 そんな事を考えていた矢先、階段の音が自分の耳に入ってきた。 「やばっ! 隠れてくれ!」 「きゃっ!」 俺は蒼貴が驚くのに構わず、彼女を引き出しの中に隠した。周りを確認する。ゴミ置き場で拾った装備は鞄の中、クレイドルも鞄に入れた。完・璧。 直後、妹が入ってきた。こいつは今時の女子高生で色々と外で遊びまわっていて、チャラチャラしたファッションをよくしている。だがその反面、家ではイラストを描き、BL小説を数多く保有している上に家族の前じゃ、丈の短いシャツとパンツという出で立ちだ。正直、勘弁してほしいものだ。 こんなのを見ていると恋愛シミュレーションとかで出てくる様な妹なぞ幻想だとマジで思う。 考えてもみてほしい。これに加えて騒げば何とかなると思い込んでいる脳みその持ち主だ。こんなのに魅力を感じるだろうか、いや、ない。 「お兄~。パソコンやらせて~」 「やなこった。お前に貸したら何時間延長されるかわかったもんじゃない」 「え~」 あまりよろしくない口調で頼み込んでくるが速攻で断る。 言い忘れていたが、こいつはパソコンを際限なくなるものだから親に時間を制限されている。そんな訳でノートパソコンのある俺に頼むのである。 たまに上手いイラストを書くことを取引にやらせたからこうして来たクチだと思われる。だが、今はギブアンドテイクをしている時間はなどない。 「うっさい。俺はレポートがあるんだ。一人にしてくれ。こんなのを始末しているんでな」 「……わかった」 俺がとっさに見せたパソコンの内容……レポートやらCG製造ソフトの様子を見せると妹は引き下がった。 こういう単純な奴には訳のわからないものを見せつけるに限る。それに勉強ともなれば手出しの出来ない建前となる訳で誰かが来る率も下がる。 そうして妹が立ち去ると誰もいない事を確認して蒼貴を引き出しから出した。 「びっくりしました……。どうして家族には隠すのです?」 「……俺の体面上の問題だ。人形を持っていると気味悪がられる」 「私のせい……なのですか……?」 人形という言葉に反応した蒼貴はまたしても自分が迷惑していると思い、俺の顔を伺う様に問う。 「違うって。何でも自分のせいにするな。いいか? 大の大人が人形を持っているというのは気持ち悪がられるのが全体のイメージなんだ。要するに大多数の意見を敵に回したくはないってこった」 「はぁ……。何だか難しいですね……」 「まぁ……なんだ、大人の事情って事で我慢してくれないか?」 「……わかりました。家族が来たら隠れます」 理由を取り繕い、蒼貴に自分から隠れる事を確約させる。これで隠れ場所を作っておけば余程の事がない限り、バレないだろう。 「ああ。そうしてくれ。……そういや、俺は武装神姫について知らん。これからどう面倒を見ていけばいいか、教えてくれ」 「あの……もしかして武装神姫を知らないんですか?」 「ワリィ。俺は今まで興味がなかったから見た事があるだけなんだ」 再三言う様だが俺は武装神姫のタイトルと人形が動く姿を映像で見たぐらいしかない。ぶっちゃけ、オタクが家で引きこもって愛でる愛玩用か何かのものとしか考えてなかった。 そんな訳で世話の仕方なんて知るはずもない。さらにクレイドルの説明書はあっても武装神姫についての説明書がなく、残る方法は目の前にいる神姫そのものに聞く事だけだった。 「それでしたらマニュアルをネットからダウンロードした方がいいと思います」 なるほど。と俺は蒼貴の提案に納得する。 確かに公式ホームページで説明書だけをダウンロードする事が出来る電化製品は結構ある。神姫も例外ではないのかもしれない。 早速、ネットを開き検索をかける。案の定、すぐに求めるものが見つかった。開いてみるとかなり痛いイラストが混ざった公式ホームページが表示された。 こういうのが流行りなんだと強引に自分に納得させると早速、マニュアルのダウンロードをし、今後の予定を考える。とりあえず、鍛錬して技能試験をするのが当面の目的とするのが良い様だ。 掲示板にも入って情報収集をする。そこには例のごとく何やら趣味がアレな奴らが混ざっていたりしたが、情報は確かであり、蒼貴の躯体は命中と回避に優れた忍者タイプである事が判明した。 さらに前のマスターが埋め込んだCSCも確認した。中にはルビーが一つ、エメラルドが二つが格納されてあった。バカにしてはなかなかな組み合わせをしてくれているものだ。それにだけは感謝してやろう。 まとめると回避をし、反撃する……蝶の様に舞い、蜂の様に刺す戦いが最適であるという事だった。 そのためには無駄な装備を省き、回避力と機動力に特化したやり口で行くしかない。鍛錬も相当必要だと思われる。 蒼貴を見てみる。俺の隣で一緒に掲示板を見て、知識を吸収しようとしている。小さいながらも感心できる姿勢で俺はそういうのは良い事だと思う。 「オーナー、頑張りましょう」 唐突に彼女が話しかけてくる。まだ信用しきっている訳じゃないが、俺をアテにしているのがわかる。 「お、おう……」 俺は思わず、返事をしてしまう。そうした姿勢を無碍にするほど、俺もろくでなしではないつもりだ。 とは言え、内心は複雑な心境だった。もし誰かにバレたらどうしようとか、もし、変な目で見られたら俺はどうなるんだろうとか、その他etcetc……。 何でこうなったんだかはわからんが、ここまで来てしまったら仕方がない。 毒を食らわば皿までだ。やるとしますかね。……はぁ。 進む